
寿司の名店がしのぎを削る銀座にあって、食通たちが一目置く店。それは2021年5月に開業した江戸前寿司店「佐たけ」。凛とした風格を湛えた店構えに背筋を伸ばしつつ、秋の風に揺れる暖簾をくぐります。店内に入り目に飛び込むのは、6メートルを超える白木の一枚板カウンター。その美しく端正な佇まいに、店主の意識の高さを早くも感じます。
お品書きは、昼夜ともにおまかせコースのみ。あん肝の煮付けなど季節の一品料理を数品堪能したあと、大トロからはじまる江戸前寿司が目の前で握られます。酢飯は常温という常識を打ち破った佐たけのにぎりは、熱々の酢飯が名物。酢飯が熱いときは脂の強い寿司ダネを、冷めていくに従って歯切れの良い貝類や青魚を握ります。名物の「大トロのにぎり」は、豊洲市場のマグロ専門卸・やま幸から仕入れるマグロ、酢飯は山形のブランド米・つや姫を使用。赤酢を効かせた70℃ほどの熱い酢飯で握ります。
いまにも溶け出しそうなほど、きめ細かなサシが入った大トロのにぎり。口に頬張った瞬間、ほろっとくずれる熱々の酢飯に上質な脂がとろりと絡まります。舌に絡みつくような甘み、やがて深みのあるうまみが口中に広がります。酢飯の温度と大トロを絶妙な加減で組み合わせた見事な一貫。正にこの店でなければ味わえない珠玉の逸品です。
「乾山」などの寿司田グループで約20年修業した後、ホテルニューオータニの「久兵衛」で研鑽を積み、東銀座に「すし佐竹」をオープン。2020年2月に同店を閉め、1年余りの充電期間を経て、2021年5月、東銀座に「佐たけ」をオープン。