奥湯河原の1,000坪の敷地に佇む、数寄屋造りの料亭旅館「海石榴 つばき」。目前に広がるのは、箱根外輪山の稜線。紅葉に彩られる晩秋から、澄んだ空気に湯けむりが舞う冬の始まりへと季節が移ろいはじめ、美しい景観に包まれています。
　客室は100種類以上の椿が植えられた池泉庭園を眼下に望む本館と、奥まった渓谷沿いに趣の異なる5室を設けた迎賓館があります。神奈川県建築コンクール最優秀賞を受賞した迎賓館は、国内外の要人も逗留する最上級の貴賓室です。今回ご紹介するのはその一室「花富貴」。130㎡の空間に本間と副室、寝室を備えた温泉露天風呂付き和洋室で、格式高いしつらえと現代の快適性が調和した空間となっています。檜造りの露天風呂は渓谷に面し、まるで自然とひとつになるような開放感。湯船には日本最古の和歌集である万葉集に記された名湯が絶え間なく注がれます。
　調度品やしつらえに贅を尽くし、箱根の山々の風景までも部屋の一部として取り込んだ、日本旅館の真髄を堪能できる迎賓館。その静かな佇まいは、屋号に冠した椿の花言葉「気取らない優美さ」に重なります。
　さて、ここでの大きな楽しみは「泊まれる料亭」とも称される評価の高い料理。“素材の持ち味を活かす”この言葉を頑なに形にすることに心血を注ぐ、海石榴のおもてなし。心静かに行く年を想いながら、美味と名湯をじっくりとご堪能ください。