みなとみらい線馬車道駅に降り立ち、夏の潮風を楽しみながら異国情緒ある街並みを歩いて約2分。訪れるのは、小さいながらも凛とした佇まいが目を引く「馬車道 大かわ」。名店揃いの都内からわざわざ足を運ぶ方も多い日本料理店です。
大かわの信条は、真っ直ぐ潔く。食材との一期一会を大切に、その一つひとつに敬意をはらい、滋味を活かしきることに心を尽くします。お品書きは季節のおまかせコースのみ。基本の水・塩・酒・米・茶からこだわり、細やかな感性と巧みな技による、実直でごまかしのない味わいが評判です。料理内容は月ごとに変わるものの、名物といえるほど人気の「鯖鮨」は、八寸や一品として必ず提供される通年メニュー。旬真っ盛りの鯖を最適な状態で提供するため、時季に合わせて産地を選び、丁寧に調理します。
驚くのは寿司めしよりも分厚い鯖の身。一切れを口に頬張ると、身の締まった鯖は歯切れよく、わずかにねっとりととろけ出します。脂がほどよくのった鯖を支え引き立てる寿司めしとのバランスが絶妙で、コクがありながら後味はさっぱり。鯖のうま味、米の甘さ、塩加減や酢の酸味、これほど塩梅のいい締め具合はさすがというほかありません。
大かわの季節のおもてなし。料理と器とが調和した盛り付けがまた美しく、“美味しい記憶”とともに心に刻まれるはずです。
和食ひと筋30余年。新橋の料亭「金田中」で15年研鑽を積み、2020年4月、系列店「馬車道大かわ庵」のオープンに伴い、同店の店主として就任。「外見的な豪華さにとらわれず、真っすぐ潔く。旬の食材を大切におもてなしいたします」。