これほどまでに隣の客が注文したものが気になる店はあるでしょうか。炉端を囲むカウンターには、活きのいい魚介類と瑞々しい野菜。客はそのなかから食べたい食材を選び、目の前で大将が炭火で焼きあげていきます。ここは、北海道・狸小路市場にある炉端焼店「めんめ」。昭和風情漂う空間に芳ばしい匂いが立ち込め、パチパチと炭のはぜる音が食欲を掻き立てます。
店名の「めんめ」とは、北海道の浜言葉で高級魚キンキのこと。店名にするほど力を入れているこの魚は、大将の地元である道東から直送した鮮度抜群のもので、他では見られない大きさと脂の乗りが自慢です。炭火の熱にじっくりと煽られ、ジュワジュワと脂を滴らせるキンキ。大将が美味しさの最高点を見極め、熱々のまま目の前へ提供します。しっかりと焼かれた頭はパリパリと香ばしく、ふっくらとした身はびっしりと詰まっています。上品な脂の乗り具合、弾力すら感じる身。さすが高級魚と言わずにはいられません。残った骨や皮もキンキのスープとして味わえ、素材を余すことなく活かし切るのもめんめの流儀です。
大ぶりのホタテ、脂の乗ったホッケ…。誰かが何かを注文するたびに客の目は食材と炉端を忙しなく動きます。次は刺身にしようか、酒煮か鍋か、お酒を片手にあれこれと悩むのも楽しいひとときです。
網走出身。釧路の寿司店、札幌のかに家などを経て、平成15年、炉端焼の店「めんめ」をオープン。こだわり抜いた新鮮な魚と野菜を毎日仕入れています。